パリ市ホームレス調査 準備編

パリ市ホームレス調査 準備編

パリ市連帯の夜 Nuit de la solidarité

現実を把握・現実に即した支援の実現・市民の連帯を促進

パリ市は3年前より、冬のある定められた日の晩、夜22時から深夜1時までソーシャルワーカー400人と、市民ボランティア1500人を動員し、ソーシャルワーカーをリーダーとした4-5人のグループに分かれパリ市内全ての道と場所をくまなく歩き、路上で寝る人の数を数え、その状況を調査している。

それまで研究機関から発表されていた調査結果と違い、例えば女性ホームレスの割合は2%ではなく14%だということがわかって女性用のホームレス施設が増設されたり、現実に合った支援を模索するための方法とされている。

しかし、それだけでなく、1500人の市民ボランティアが普段ホームレスに声をかける勇気がない人も研修を受けホームレスの現状を知り、路上で出会う人たちと一晩中会話する中で、話しかけたり必要なことを聞く練習をし、より気軽に手を差し伸べられるようになることも目的としている。

その夜のうちに相手の状況を解決することはできないが、出会うホームレスが支援を求めている場合は、本部に連絡してソーシャルワーカーたちが現地に赴き対応する。

2019年の結果

 調査した2月7日の夜、路上で寝る予定だと答えた人、路上で寝ていた人は3641人。2018年より200人多い(調査場所の増加による影響もある)。

うち女性12%、未成年92人。

路上にいたのが2600人、駅300人、地下鉄300人、ブローニュの森とヴァンセンヌの森の中300人、病院の廊下や待合室100人、駐車場45人。

当日パリ市ホームレス用宿泊施設2万5000床は全てうまっていた。

パリ市は市民ボランティアと支援を必要とする人たちのための事務所を設けている

パリ市は「連帯作り」(Fabrique de la solidarité)という事務所を持っており、そこを訪れた市民はいつでも、どのようなボランティア活動があるか知り自分の得意分野を生かせるもののアドバイスをもらったり、どんな寄付の需要があるか知ることができる(女性の生理用品の寄付箱など置かれている)。困った状況に置かれている市民は、そこでインターネットを使ったり、温かい飲み物を飲んだり、どこでどんな支援を受けることができるか相談することができる。

申し込みと事前講習

「連帯の夜」にはパリ市のホームページから1ヶ月前から申し込みをすることができ、深夜の調査なので歩いて帰れる区を選ぶ。当日の一週間前と二週間前に「連帯作り」にて講習がある。

講習は2時間におよび、30人ずつくらいのグループに分かれ、市と協力関係にある民間福祉団体の職員2人と、現役のホームレス2人によって、ホームレスの現状、誤解しないために理解しておくべきこと、するべきこととするべきではないことなどの説明を受ける。

講習タイトル「相手の元に向かうことができるように」

現役ホームレスであるマチューさんからまず現状の問題点について説明があった。

ホームレス用緊急番号は1時間待ってもつながらないことは多々あり、1/3は電話がつながってもどこもいっぱいで宿泊場所の確保に至っていない。なので、ホームレスの2/3は普段そこへ電話さえしない。また、継続して宿泊できるのは1泊から3泊のみである。大部屋に大勢いる宿泊施設もあり、かえってゆっくりできない経験をしていると、もう行きたくないという人もいる。また、パートナーと離れたくないと宿泊施設を希望しない人もいる。

マチューさんは宿泊施設が合わず、仲間と一緒に森にいることを希望しホームレスのままでいる。

課題として、長期で過ごすことのできる施設を増やすこと、またマチューさん自身は団体に協力し、トイレをホームレスに貸してくれる商店を増やす取り組みをしている。

課題として、長期で過ごすことのできる施設を増やすこと、またマチューさん自身は団体に協力し、トイレをホームレスに貸してくれる商店を増やす取り組みをしている。

マチューさんから以下のアドバイスをもらった。

  • 話しかけるときは、寝ている人でも、同じ高さに目線を合わせること
  • 「こんにちは」という挨拶と「私はOOで、OOをしに来ました」と自己紹介を最初にすること
  • 「NO」と言われたら、今話したくないということなので、決してそれ以上プライベートな時間を侵害しないこと
  • 大人数だと圧倒されるので最大でも2人。3人以上で押しかけない。
  • 寝ている人、片付けている人は、自分の家にいてプライベートな時間を過ごしている感覚なので決して話しかけないこと。物を盗まれたり怖い思いをしたことがある人ばかりなので、視界に入る場所からのみ近くなどびっくりさせない配慮をすること。
  • 何が必要かこちらが勝手に判断するのではなく、何かして欲しいことがあるか聞くこと。体調悪そうだったので勝手に救急車を呼ぶ、苦手かもしれない食べ物を買ってきて渡すなどしてはいけない。スーパーやパン屋に行く前に路上にいる人に出会ったら、何を買ってきてほしいか聞くのが良い。