Studies about Child Welfare and protection

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“Tous les enfants ont les mêmes droits.
L’enfant doit être protégé et vivre en sécurité.
L’enfant a le droit de jouer, de se reposer et de se détendre.
L’enfant a le droit de donner son avis, et les adultes doivent l’écouter et le prendre au sérieux.”

こどもはみんな たいせつにされなければなりません
すべてのこどもは あんぜんに まもられなければなりません。
すべてのこどもは あそび、やすみ、ゆっくりする けんりがあります。
すべてのこどもは じぶんの いけんをいう けんりがあり、おとなは それをきかなければ なりません。

 

News

フランス在宅子育て支援の漫画『ターラの夢に見た家族生活』クラファン実施中

イベント

3月23日木曜22時 安發のこれまでの歩みとフランスのソーシャルワーカーのキャリア形成

3月26日日曜21時-21時半 『ターラの夢見た家族生活』ってどんなお話?質問になんでも答えます
Facebookグループライブ動画(予約や登録不要、グループのメンバーは時間になると視聴できます)
https://www.facebook.com/groups/585918016723014/

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いただいたコメント2023年03月10日Blog / Tara-Kabe-Translationコメント欄より 社会政策研究者 「パボさんの言葉はそうだよね、そうなんだよね、とうなづくことがいっぱい」「何度かお話をお伺いしたのですが、本当に色々違いすぎます。私たちの「当たり前」を見直すきっかけになるかと思います。」 自治体職員 「新しい考え方を知るのが議論における第一歩」 書籍編集者 「フランスの子ども支援、家族支援、お話を聞くたび、すごいな、おもしろいな、と思います」 地域子育て支援活動実践者 「日本でも、子どもの環境をより良くするヒントや、考えるきっかけになると思います。」 「一番大切なのはこれから育とうとする子どもたちで、そのために大人である自分たちに何が出来るのかを考えたいと思います。そのためには、外国から学ぶことも必要だし、自分たちの中から良いアイデアが浮かべば、それを実現するためにいろいろやってみるのも良い事だと思います。まずは、いろいろ知ることが大事です。」 弁護士 「安發明子さんのお話は大変興味深く、そして、とってもパワーをもらいました。共感しまくりでした! 助産師 「私はこんな支援がほしい。家庭の中に入り込んで、第三者として見守る、寄り添う。時には一緒になって楽しむ。それは中立な立場で夫婦をみてくれる人で、いつか子どもにとって親以外の頼れる人になる。そんな家族と一緒に伴走してくれる専門家が日本にもいたらいいなって思います。」 ウェルビーイングを形にするプロジェクト企画者 「どんな環境にいる子供たちも自分を生き生きと輝かせ自由に自分のやりたい事が将来できる環境にあることが、少子化の日本においてますます大切になるだろうな。みんなで子供たちを支えていきたいな、と思います。」 心理士 「一人のソーシャルワーカーとしてまだまだやらなければならないことがたくさんあることを、カルチャーショックとともに痛感しました。大きな気づきを与えてくださいました」 自治体職員 「フランスの家族まるっと応援する制度、こども一人一人を社会で尊重して支援する仕組み、そこには色々な示唆があります。」 研修講師 「漫画だからできる伝達があると思って、この出版も応援している。」 [...]
『ターラの夢見た家族生活』との出会い2023年02月14日Blog / Tara-Kabe-Translation仲間と戦うフランスの在宅教育支援の専門職たち フランスでは学会や集会のときに笑わせてくれる人を雇い、休憩前や休憩後にみんなで笑う習慣がある。劇団員を呼ぶことが多く、彼らはそれまでの議論の内容をもとにみんなを大笑いさせる寸劇を披露して、参加者をいい気分で次の議論に臨ませてくれる。 在宅教育支援の全国大会は毎年3日間かけて開催され、1200人もの専門職たちが全国から集まる。例えば1つの支援チームが12人で構成されているとしたら、その中から大体毎年2-3人ずつが交代で参加する。もちろんそれは仕事の日数としてカウントされ、交通費や宿泊費、パーティー参加費に至るまで職場で予算が組まれている。大会中は、同じエコバッグに資料を入れ街を歩いているだけで誰にでも声をかけられる特別な期間だ。 「どこで働いているの?」「どんなことが課題?」と、すぐさま語り合える1200人と出会える。連絡先を交換し、「今度遊びに来てね!」「情報交換会しようね!」と言い合えるのだ。全国大会は毎年別の地域で開催するが、主催地域のワーカーたちは1年かけて自分たちで準備する。事務局を外注するわけではない。おもてなしのダンスで迎え、昼食は在宅教育支援の元利用者が経営しているケータリングで、現利用者の職業訓練中の子どもたちが食事を作る。元ワーカーが次々と発表をおこない会場は熱気に包まれる。このワーカーたちの一体感で、みんなで在宅教育支援をもっといいものにしていこう、課題を乗り越えようという気持ちが湧きあがり、自分に仲間が長年いなかったことに気付かされる。仲間がいるからフランスのワーカーたちは戦い続けられるのだろう。 2022年、この会場でみんなを笑わせていたのがパボさんだった。会場の入り口には元ワーカーが作った相互理解を進めるためのゲームや作品などが並び、その一角で『ターラの夢見た家族生活』をパボさんが山積みにしていて、サインを求める列には30人近くが休憩のたびに並んでいた。 「在宅教育支援を描いた漫画があるなんて..」その日は1冊だけ買って帰って読んだ。翌日も大会があるというのに結局夜中の4時まで、ページをめくるごとに笑ったり泣いたりした。ワーカーとしてできることよりできないことの方が多いこと、自分よりずっと賢くたくましい子どもたち、一生懸命やっていても笑われることの方が多いこと、けれど心が触れ合えたような瞬間がたまにあること。子どもと働く素敵な瞬間。ターラちゃんとパボの姿と思い出の子どもたちと心許ないワーカーとしての思い出が交錯する。翌日には出ている残り2冊、デッサン集、持ち金を全部使って買い集めた。 2000年代、当時生活保護を支援するワーカーをしていた私は、日本の生活保護現場でできることに満足がいかなかった。持てるものが少ない国だから成す術がないのではなく、持てるものが多い国なのに困っている人に提供できるものが少ないことが悔しかった。お金があればいくらでも治療法があるのに「あなたにできることはほとんどない」と伝えさせられているように感じていた。日本は国際協力に力を入れていたし、私の働いていた自治体はスポーツの国際大会開催にとてもたくさんのお金を使っていた。私はそれを横目で見ながら、道路に面したマンションの裏にある、陽の当たらない一軒家のわきのブロック道を進み、さらに裏にある、年中水溜りがなくなることのない泥道に囲まれた、外より虫が多く、壁一面カビが生えた家で、病気のお母さんが子どもたちと暮らす家を訪問していた。このような環境しか用意できないのに「元気になって働いてください」と言う福祉だった。 私はついにその後4年近くうつ病になり、精神科病棟に入院した。入院中は生活保護で担当していた利用者さんたちに「安發さん、あのお仕事は大変だよね、大変だったと思うよ、つらかったね」と励まされた。いつも窓口に文句を言いに来て私に怒鳴っていた女性は、夜間それぞれの看護師が何回部屋の前を通ったか知っていて、皆のスリッパの音を聞き分けていた。しょっちゅう入院していてほとんど会う機会のなかった男性は病院での生活の方が長いという。「世界の車窓から」の時間にいつも「安發さん行ったことある場所かもしれないよ」と呼びに来て一緒に見るのを楽しみにしてくれ、退院のときには「ここも甘い思い出になりますように」とピーチネクターをプレゼントしてくれた。 生活保護ワーカーをやめた私は、これまでに会った子どもたちの生き方を多くの人に知らせることで「どんな子どもにも幸せになってほしい」と思ってもらえるのではないかと考え、日本とスイスの施設で暮らす子どもたちのライフヒストリーを本にした。しかし、それでも企業で働く友人たちには「でも、教育の機会があったんだから苦労も乗り越える努力をするべきだったよね」と言われてしまい、関心を集めるには至らなかった。「アフリカの子どもとかは純粋にかわいそうだと思えるけど、日本の困っている人の話は暗くなるから聞きたくないし、むしろ本人や親がどうにかできなかったのだろうかと思う」こんな反応さえも多くあった。フランスでは、生活保護の子どもたち、利用者さんたちに元気になってほしいという話は人を選ばずできるのに、なぜ日本では福祉の話でみんなと盛り上がれないのだろう、なぜみんなは無関心なのだろう……。当時は疑問の答えは出なかった。 うつ病が治り元気が出て2011年に渡仏し、2年かけて大学院に入り、児童保護施設に通うようになった。そこでパリの父や母のような人たちにたくさん出会った。彼らの児童保護や福祉に対する燃えるような情熱は4時間話しても尽きないほどだった。なにより子どもたちが元気になって目をキラキラさせていた。けれど、そのときの私はフランスの学校の仕組みもよくわからない、保健所も日本とはずいぶん役割が違うみたい、と全体の構造を理解するのに3年かかった。さらに、それぞれよりよく知るため毎年100を超える機関や人に会いに行くのに2年を要した。その後、やっとフランスの福祉についてわかってきたと、今度は日本語で発信を始めるが、理解していれば書けるわけではなかった。日本にない概念の説明に苦しんだり、思ってもいなかった解釈をされたり、4年目になる今でもまだまだ四苦八苦している。フランスと比較して日本にとって有益なことを提言できるようになるにはまだ何年もかかるだろう。一方で、12年余り通訳としてさまざまなプロジェクトの成功を影で支える中で、自分自身の成し遂げたいこともいつか成就させたい、このままでは死ぬに死ねないという決意も固まっていった。日本の全ての子どもが幸せな子ども時代を過ごしてほしい、そのヒントがフランスにはたくさんある。まるで求められているとは限らない商品を1人で開発し、生産し、探求するような時間が続いていた。 そんなときに出会ったターラちゃんの漫画は実に衝撃的だった。きっと私が数ヶ月かけて書いてもうまく伝えられているとは限らない論文より、よっぽど日本のワーカーたちの力になるだろう。論文よりずっと『ターラの夢見た家族生活』のようにフランスの現場の哲学や理念や価値がつまったものを訳していった方が日本の後方支援になるだろう。 フランスの福祉だって20年30年前の話を聞くと「子どもの権利」という点では眉を顰めてしまうような話が出てくる。発展というよりも、失敗からの学びと言ってもいいくらいだ。だけど、いまではエデュケーター出身の映画監督、ラジオDJ、ゲーム制作会社社長、そしてパボさんのような漫画家までいて、彼らが世の中にいろいろな手を使って子どもを守ることの素晴らしさを訴え続けている。 私にも戦う方法がある。日本の現場では利用者の人たちの力にほとんどなれないまま戦線離脱した。私には素質がないと思っていた。みんなができることが私にはできず病気になった。けれど、今思えば解決する方法を知らなかったし、解決するための仕組みも十分ではなかった。今の私は、本人の素質の問題ではないと知っている。解決する方法や仕組みを整えることを提案することができる。 自分がワーカーのとき、子どもと隔週で会っても面談という形では十分相談してもらえないままだった。大人たちの車に乗せられるようになり、家には帰らなくなる少女たちもいた。パボさんがマジシャンなわけではないけど、ターラちゃんにとっては「パボがそばにいて、いつでも相談できる」というだけでターラちゃんを取り巻く世界は大きく違ってくる。パボは学校に迎えに行き、一緒にピクニックをして、ターラちゃんの人生の一部を一緒に歩いて支えている。 私が講演などで「信頼できる大人と成長していける仕組みがあれば、子どもの調子が良くなって、親とも協業することができる」と言っても日本の聴衆には「家族のことについて他人に口出しされるのは日本の文化に合わない」と返されることもしばしばだったが、漫画なら姿勢やしぐさ、言葉遣いなども読む人に感じてもらえる。 私はフランスの児童福祉の現場に通い、子どもたちが調子が良くなっていくのに勇気づけられているが、日本で出会った子どももこの制度があればもっと幸せに成長できたのにと、たくさんの子どもたちの顔が脳裏に浮かぶ。私自身もこんな大人がいる中で子ども時代を過ごしたかった。 パボさんは「人生はしたいことを全部するには短すぎる」と言う。私も夢の実現に一番近いことを常にしていたい。私がエンパワメントされたようにこの本は日本の子どもと働く人たちに力を与え、子どもたちをとりまく環境にきっといい風を迎えることになると信じている。私が元気づけられたように、今度は私がこの漫画を日本語翻訳し、皆さんを元気づける側に回りターラちゃんとパボさんの物語を多くの人に届けたいと思っている。 日本の仲間、戦友の皆さんへ 2023年2月14日 安發明子 [...]
治療より予防が低コスト2023年02月14日Blogフランスはなぜ子育て政策に力を入れるのか? 日本で社会的養護の子どもは未成年人口の0.2%、それに対しフランスでは2%もの子どもが対象です。それはフランスで虐待が10倍多いわけではなく、「心配」を基準にすることによって虐待という極端な状況をそもそも防ぐことを目的としているからです。さらに保健省は成人の12%もが未成年のとき継続的な暴力の被害を経験しているとしており、そもそも誰も暴力の被害を経験しないように、経験した子どもは早期にケアを受け良い成長を保障できるように全ての子どもの育ちを守るため学校など子どもの通う機関に子どもの福祉の専門職を配置しています。目的を全ての子どもの教育と福祉とケアが守られることとしています。 日本でもフランスでも福祉の構造は大体同じです。ここでテーマとしている在宅教育支援は日本では市町村子ども家庭支援拠点が担っています。なので新しい仕組みや専門職を提案しているのではありません。同じようにあるものを、あるだけでなく行き届かせること、全ての子どもが幸せに育てるよう制度を生かせるように呼びかけたいというのがこの企画の一つの理由です。 フランスで実施されたSaint-Exという研究(2018)では、4歳までに危険な目に遭い保護された子どもを22年間追跡調査した結果、その後継続的なケアをしても1/4もの子どもは成人しても安定した生活をすることができておらず社会保障に頼る必要がある状況であることがわかっています。これはそれまでに実施されたいくつもの追跡調査と一致しています。1/4は良い経過をたどり、1/2は不安定でありながらも社会保障を頼らない状況、1/4はまだまだケアが足りず社会保障に頼る状況です。虐待が起きてからではその影響はかなり先まで及ぶということです。 保健省の社会問題観察機関IGASによると親を支援することは、子どもが社会的養護が必要になることに比べ9千分の1のコストで済むとしています。パリ市での調査によると、児童相談所によるフォローが必要になると,平均的な支援期間で計算すると在宅教育支援で子ども1人あたり約67万円,施設(里親)入所になると1人平均約2700万円かかります。在宅教育支援は月5時間5万4000円で家族全員に関わることができるのに対し,保護の場合子ども一人あたり月70万円,さらに心理ケアなど治療費や親への支援も別にかかり、長期に渡り保護する必要がある子どももいるからです。 それゆえ、経済的な理由も含め、保健省は「親をすることへの支援デスク」をおき、「親をすることは,親としての機能の物理面,心理面,精神面,文化面,社会面といったさまざまな側面を結び生かすプロセスである.どのような家族構造の中においても,子どものケアと成長と教育を保障するために,大人と子どもの関係性に働きかける」としています。「親を支えることで子どもの不登校,精神的な問題,行動障害,注意力不足,暴力,リスクを伴う性行動を防げることが実証されている」 とも報告書に書いています(保健省 2018)。 法律上は社会福祉家族法 CASF Art. L.112-3「親への働きかけをおこなうことの法律」は「家族の持つ資源と子どもの置かれた環境についてまず働きかけをおこなう.親が直面している困難を理解すること,そして状況に適した安心して利用できる支援を紹介すること,紹介だけでなく実行し親が教育的責任を全うできるよう支える」と定めています。 これらの背景が、スクールソーシャルワーカーなどの専門職に費用を割くこと、在宅教育支援で専門職が家庭に定期的に通うことの有効性として共有されています。在宅教育支援が一定時点に支援している子どもは未成年人口の1%ですが、3年以内に終了することが多いので、未成年のうちに経験した子どもは3-5%いると言われています。 パリ市の統計では6-16歳の10%が学校のソーシャルワーカーの継続的支援を受けています(OPPE 2021).また法律で,健康面での不平等をなくすべく,身体面だけでなく,知覚神経,心理面愛情面,神経発達面,言語面での教育省に所属する医師による学校への巡回診察も行うように定めている.さらに,診察だけでなく,学校は教育省に所属する医師と連携して,診察結果適当とされている治療やケアを実現することを求めています(教育法541-1) 不登校についてはどうでしょうか。フランスでは月2日以上の医師の証明のない欠席から県の担当部署に報告し家族も含め対応することになっています。教育省のホームページには学校システムからの早期退出は「高校卒業資格または国が定めた職業資格を得ずに社会に出た者」という定義なのですが、学校システムからの早期退出について(中学校、高校卒業資格をとるのは難しいので日本との違いがあるものの)「⻑期失業、低給料で不安定な就労、健康面、自尊心の低さ、人生の QOL の低さ」のリスクを高めるとしています。本人たちの才能の価値を引き出さないことは社会的な損失であり社会の調和を揺るがすものであるため「現在に投資し、未来のコストを削減する。社会の調和を守る」ための予算が必要と記述されています。学校システムからの早期退出者の国にとっての損失は週 2865 億円(2,3milliards euro)、1 人あたり生涯平均 2740 万円から 2860 万円(220 000-230000euros)社会扶助費がかかる。全体で 1540 億ユーロ(154 milliards dʼeuro)の社会的コストである。それを、5 年間で学校システムからの早期退出者を半数にすることができれば、この半額ものコストを減らすことができるとして専門職による支援の正当性を説明しています。 日本においても、子どもが虐待を経験せず、より良い環境で育つことは経済面以外でもプラスがあると言えないでしょうか。例えば少年院での統計では、家庭内で虐待経験 がある子どもは79.6%、 家族以外の第三者からの暴力等の被害経験は60.1%、第三者からの性的被害経験は男子17.7%、女子61.4%。少年院入所者は被害当時してほしかったこととして、「話を聞いてほしかった」32.1%、「相手を止めてほしかった」29.8%、「つらい体験をしていると気付いてほしかった」28.0%、「逃げられる場所がどこにあるのか教えてほしかった」21.1%、「自分の話を信じてほしかった」15.6%、「かくまってほしかった」15.6%と答えています。(羽間京子、2017、少年在院者の被虐待体験等の被害体験について、矯正教育研究62巻、日本矯正教育学会) 被害者であった子どもたちが大半であることがわかっています。 子どもが幸せに育つことは、より良い社会につながる、みなにとってプラスの働きかけなのです。 日本でも予防は市町村子ども家庭総合支援拠点が担っています。フランスの在宅教育支援と同じような役割をしています。より良い家族の支えが実現していくためにフランスの支援の方法も一つの検討の視点を与えてくれるのではないかと思っています。フランスの元支援者が書いた本の日本語版出版にご協力お願いいたします。 [...]
地域の居場所と不登校2023年02月11日Blogこのコーナーは『ターラの夢見た家族生活』をご支援いただいた方から届いたメッセージと安發のお返事を紹介しています。同じ現象に日本の福祉と、フランスの福祉はそれぞれどのように対応しているのか。 — 互助の活性化を目指している「地域の居場所」ができること フランスでは親族による子育てが難しい時は、エデュケーターという子ども支援の専門家が子どもの養育に関わるそうですね。 私は行政保健師の時に行政ができる限界を感じていました。また仲良しだった祖母の晩年を親族として1人で支えた経験から、地域住民の互助が活発になるように「地域の居場所さっちゃんち」を設立・運営しています。私たちが目指していることは、すでにフランスでは制度化されていることを知り、フランスの福祉をもっと知りたい!と思いました。 日本では、子育ても介護も世帯内あるいは親族内で行うには、限界を感じている方も多いのではないかと思います。そこで、住民が出会う新しい仕掛けを作り、必要な時は助け合える関係性を生み出したく、2016年に存命中の祖母宅でさっちゃんちを始めました。最初は、月1回の英会話サークル、1年後に地元の鎌倉野菜を販売する朝市を追加、さらに2020年からは、火曜・木曜日を家屋と庭を自由に使える自由利用日としました。今では、活動趣旨に賛同して運営のために働いてくださる方(無給のスタッフ)も増え、常時留守番役をしてくださる方や、特技や関心を生かした講座や集まりを開催してくださる方もいて、温かな時間が流れています。 最近、不登校の親の会を主催しているスタッフの1人が、息子さんの小学校の管理職の方に関する考えをnoteに記しました。その管理職の方は、「学校は社会の厳しさに耐える力をつけるための場所。たとえ低学年であっても、辛いことや苦しいことを頑張って乗り越えさせるべきである」というようなお考えをお示しされたそうなのです。スタッフが無力感に苛まれたのはもちろん、私もフランスの子育て支援体制を知った後でしたので、余計に、教育は何を目指しているのか、教育を受ける権利はどう保障するのか、日本において「市民社会」とはどういう意味を持つのか、などと考え込んでしまいました。 現在、スタッフの子どもが在住している自治体では、就学する学校を自由に選択することはできません。子どもが学べる場所の選択肢をもっと増やすべきではないかと思います。さっちゃんちには、教育の専門家はいませんが、棟梁(とうりょう)の叡智が注がれた空間と、自発性を尊重する人たちが紡ぎ出す温かい雰囲気はあります。学ぶ場所の選択肢を増やすために、フランスの支援体制をヒントに、さっちゃんちでも学校に行かれない子どもたちが来やすくなるように準備を始めようとしています。 地域の居場所さっちゃんち スタッフあささんnote — 安發お返事 フランスのある不登校支援校に調査で3年ほど通いました。県の予算で運営していて無料で通え11-18歳の子どもが来ていました。笑ってしまったのは、朝8時半に校門が開くのに8時から寒い歩道でたくさんの子どもたちがおしゃべりをしていることでした。君たち本当に不登校だったことがあるの??好きな学校だったら喜んで行くんですね!ここでは子どもたちは自信をつけ1年半-2年くらいで一般の学校に戻って行っていました。「クラスメイトが兄弟のようで、先生たちが親戚のおじさんおばさんのよう」と言っている子どももいました。 フランスの公立校についても批判的なことはたくさん言われています。子どもたちが勉強で忙しすぎる、少しついていけないだけで特別なプログラムや治療を勧められる.. 一方で、子どもに選ばれる学校でなければならないという考えがあります。 子どもはある程度学校を選択でき、必ずしも学区に限らず自分の希望の学校に通うこともできます。例えば私の区にはインターナショナルセクションがある幼稚学校、小学校があり、フランスの教育と日本の教育と両方受けられるので、学区でなくても勧められました。在宅支援を受けている子どもたちも、特別繊細だったり、小さいとき障害があり遅れがあったり学びに凸凹がある子どもが多くいるので、公立でも9-12人学級の少人数制のところに転校したりする機会にとても調子が良くなる子どもはたくさんいます。 いじめがあると加害者が転校処分になります。3歳から義務教育ですが幼稚学校から公立で全寮制の学校があって、子ども自身が全寮制で週末家に帰る生活を選ぶことも特に10代ではよくあります。 また、どの職業もポストごと採用で、つまり教職員は校長で自分の職場を選んでいます。希望しない限り異動はなく全国どこの学校に勤めることもできます。なので訪問すると校長と職員がチームとしていい学校にしようと取り組んでいる団結力があります。20年近く同じ学校で教えている人気の先生たちがいます。地元の住民も「ここの学校は素晴らしい」と誇りにしています。子どもたちに学校が押し付けられなければ、競争力が働きいい学校にして子どもたちと住民の人気を維持しなければならない。地元のアーティストを呼んで美術の授業をしたりオーケストラを呼んだり。 そして子どもの調子が悪いときは子どもと両親と一緒に方法を探します。家庭を丸ごと支えた方が安心な場合はターラちゃんのように在宅教育支援を受けることもあります。 24万人もの子どもが登校を積極的に選択していない、転換期にできることは何でしょう。子どもたちが生き生き楽しく過ごせる学校を子どもたちと一緒につくること、子どもたちの不調を家族丸ごと支え一緒に解決まで見届けるソーシャルワークなのではないでしょうか。 ーーー 『ターラの夢見た家族生活』はフランスの支援者たちの動き、家族との関わりを具体的に知ることができる本です、是非出版実現のご支援お願い申し上げます。 [...]
ターラちゃんの漫画は社会的ニュース週刊誌に連載されている2023年02月10日Blog / Tara-Kabe-Translationターラちゃんの漫画がフランスのソーシャルワーカーたちに知られている理由、それは社会的ニュース週刊誌ASH (actualités sociales hebdomadaires)に掲載されているからです。ASHは福祉事務所、児童相談所、施設、学校のソーシャルワーカー室などソーシャルワーカーがいるところの待合室や休憩室には必ず山積みにされていて、約束前に通されるソファには必ず置いてあるので一般の人でも何気なく手にとる機会のある雑誌です。福祉や社会問題全般を扱っています。私が日本のひきこもりや過労死などについて度々話題を振られるのもこの雑誌が扱ってきているからです。 1955年創刊、約20人のジャーナリストが編集部にいるそうです。年間購読160euro(約2万円)、年間購読契約数は35万件。 パボさんが描いているこの表紙の週は「親戚宅措置という選択」「知的障害、親であることの実践は監視下で」といったテーマを扱っています。最後のページがターラちゃんの漫画1ページです。この週はターラちゃんがお母さんに「いつから幻覚が見えるの?」「鳩と話せるようになったのはいつから?」「幻覚と想像はどう違うんだろう?想像上のお友達がいるかんじ?」と聞いています。 私がフランスで好きなところは、ソーシャルワーカー同士の団結です。13種類もソーシャルな資格があり、分野は医療から子ども高齢障害さまざまです。でも、このASHをみんな毎週読んでいる。職場に食べ物を買ってきてみんなで大きなテーブルを囲んで昼食をとる職場が多いのですが、週のASHの記事が話題になることはよくあります。職員会議の最初にケースに関連ある記事を取り上げ話し合うこともあります。 自分の直接関わりが薄い分野も含め社会問題は自分たちの戦場の状況を伝えるようなもの、社会問題と福祉全体の状況を常に見渡しながら日々の戦いに挑んでいます。ソーシャルワークの目的は社会問題を解決することだからです。 私が特に関心があるのは全ての子どもが幸せに育つための制度整備ですが、現場を知っている人々が力を合わせ、手をつないで大きな動きをつくっていく、社会を良くしていこうという気持ちを世の中に広げていくことをASHのように実現したい気持ちがあります。 [...]
児童養護施設施設長からのお便り②2023年02月08日Blog / Tara-Kabe-Translationこのコーナーは『ターラの夢見た家族生活』をご支援いただいた方から届いたメッセージと安發のお返事を紹介しています。日本の福祉現場の状況と、フランスの福祉から得られるのではないかという見識の接点を紹介します。 —- 私が毎月施設を退所した子たちへLINEをしてます。「元気かな?」「コロナはどうかな?」とか「桜が咲いたよ?」とか、季節のことなどを織り交ぜてメッセージを送ります。 そんな中で、昨晩、数年前に退所した中学2年からのお返事でした。 A『あのね、学園にもどりたいよ』 私『何かあったの?誰かに相談できてるの?保健室の先生とか?なんとなく、Aちゃんの苦しそうな感じは伝わってきますよ。誰かいるといいんだけど』 A『あんまり、いない。言ってもあんまり変わらないし、話しにくい。ママがよくわからなくて。Aと彼氏さんとどっちが大事なんだか?冬休みも警察沙汰になってるんだよ。しかもこっちの気持ちもちゃんと言ってるのに平気で彼氏に会ったり、嘘ついて家に帰ってこなくて。少し話聞いてくれてありがとう』 私からは、児童相談所のケースワーカーさんに繋げられたらと思いましたが、Aちゃんに伝えても返事がありません。Aちゃんは引っ越して管轄の児童相談所も施設のときとは変わってしまいました。こんなメッセージのやり取りだけで、私にはこれ以上のことができない立場にいます。このようなSOSがあった場合、なんとかその子が学校の先生等に相談するように仕向けます。これが日本です。 後日 A『心理士の人にたまに話したりするけど、そうすると施設の話が出てきたりするよ。でも 今からまた新しく誰かと関係持っていかないといけないのは嫌 だし、まだ13年しか生きてないけど(笑)、今までで1番楽しかったのは学園にいた時だと思ってるからさ、他のとこに行きたくないんだよね。』 私『学園をそんな風に思ってくれてありがとう。』 A『難しいよね。こんなこと言ってごめん笑』 子どもが守られなくてはなりません。 しかし、今も子どもたちは苦しんでいるのではないかと。Aちゃんは、今日はどうだったのか?今、この時を一生懸命生きていると思いますが、なにもできないことが切ないです。 — 安發お返事 親がいても、学校にいても孤独な子どもたちに、やはり親でも学校でもない児童保護の専門職がいて家庭のことをなんでも話せたらと思います。虐待で悪いのは子どもではありません。親へのケアが十分ではないことです。なので親のケアをしなければ子どもを家に戻せばまた同じ脆さを抱えたままの環境です。心配な状況があったらまず親をケアする。施設か家の二者択一ではなく、必要に応じて1泊から施設などに泊まれ、その間に集中的に親との関係の調整ができるようにする。子どもが「ここに住みたい」と思える場所なのか施設や里親に会いに行って決められることも大事だと思います。せっかく関係性が築けたのであれば県外の施設に戻っても良いのではないでしょうか。子どもの教育と福祉とケアが一番尊重される方法を子どもと一緒に探せたら良いのに。 日本でも何人も同じような女の子に会いました。女の子と連絡がとれなくなったあと、男性宅を転々とする仕事をしたり中学生でキャバクラで働いているという話も聞きました。対応できなかったばかりに、子どもが教育を受ける機会も福祉もケアの機会も、なんと公的機関が奪っていました。今でも子どもが「他に方法ないの?」と言っていた顔が浮かびます。 フランスが好きな理由は必ず解決策を探し出すことです。ベストではなく、「最悪ではない」方法しかないということがあったとしても。けれど必ず何かいい方法を見つけ出し状況が良くなっていくのを見届けることができることが、子どもだけでなく専門職にとっても社会にとっても救いになっているのではないかとも思います。 フランスのエデュケーター国家資格は国の規定で「エデュケーターの職業的姿勢は感情移入、傾聴と親身さを土台とする。相手に合わせるということは相手が必要なときに時間とエネルギーを割くことができるということである」と定めています。このような子どもがいたら家庭を支援できる立場の機関の職員が子どもにとって安心して成長できる場所が見つかるまで見届けてほしいです。日本でもおこなわれている在宅支援、よりよいあり方について話す機会が増えることを願っています。 ーーー 『ターラの夢見た家族生活』はフランスの支援者たちの動き、家族との関わりを具体的に知ることができる本です、是非出版実現のご支援お願い申し上げます。 [...]