『「健康で文化的な生活」をすべての人に』

「フランスにおける子ども家庭福祉と文化政策」

『「健康で文化的な生活」をすべての人に』自治体研究社、河合克義、浜岡政好、唐鎌直義監修、2022年3月 

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第9章 フランスにおける子ども家庭福祉と文化政策………安發明子
1 すべての子どもを対象とした福祉は「親をすることへの支援」から 
2 文化についての考え方
3 子どもの成長過程においての文化
4 フランスの社会政策としての文化

以下抜粋:
フランスの文化政策において、文化には大きく3つの意味合いが与えられていると考えられる。
1 教育の一部としての「文化」
個々人の中にある文化を豊かにする。レジャーではなく学びに近い。
例:学童保育でも美術館やキャンプやダンスなどから活動を選べるようにしている。

2  道具としての「文化」
誰かと関係性を築く、グループとつながる、そして社会とつながるための道具。また、理解し、感動し、刺激を受け、目覚めるための道具。
例:生活保護のソーシャルワーカーが受給者たちと一緒に演劇を見に行き、お茶をする機会を設ける。一緒に習い事をする。

3  排除との戦いとしての「文化」
文化は一部の人のためだけのものであってはならない。住宅や医療に並ぶ権利の1つとしての文化。
例:刑務所に美術館が出張展示する。児童保護施設の子どもたちを美術館に招待する。
以上の文化理念が、子どもの暮らしの中でどう活かされ、福祉の中にどう位置づけられているか。

親なき子

『親なき子』北海道家庭学校ルポ

 

 

親なき子

私は2000年代の学生時代に首都圏の児童自立支援施設でボランティア活動をしていた。


首都圏にこんな場所があるのかと思えないくらい、雑草が生い茂り、廃車が雑草に覆われたまま放置され、木造平屋の畳のイグサが抜け底が見えている8畳間に10代の男の子たちが4人ずつ暮らしているような場所で衝撃を受けた。その子どもたちと長く付き合う中で、あまり社会的資源も揃わないまま社会に出て行かざるを得ない様子、保証人がいないのをいいことに最低賃金以下の労働を強いられている様子も目の当たりにした。

当時日本では、研究分野で出ているものを現場の人は読む余裕がなく良い人材を雇う予算もない、国はまだ社会的養護にあまり関心がなく、国・研究・現場が連携して取組んでいるとは言い難い状況だった。

自分の通う場所が特殊なのか、他の児童福祉施設の知りたくて全国十数施設を訪問、短期滞在を繰り返す中で、保育士、教員、福祉職、県の事務職など担い手も内容もさまざまな施設に出会った。そのなかで、北海道家庭学校は職員が腰を据えて子どもたちと向き合っており、子どもたちも自分の将来を懸命に模索しながら「将来同じ思いをする子どもたちが生まれないよう話を伝えてほしい」と話をしてくれた。

その後、スイスの施設も訪問し、 福祉を必要な人を社会がどのように支えるか、子どもたちにチャンスが与えられる仕組みを模索する。

この本では、北海道の施設、スイスの施設に暮らす子どもたちの話が紹介されている。

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