1月27日ターラ原作者トークライブまとめ

1月27日ターラ原作者トークライブまとめ

2023年1月27日『ターラの夢見た家族生活』原作者トークライブ内容

安發自己紹介:

私は日本で生活保護のワーカーをしていました。その時に母子家庭が多かったんですけれども、子供たちの状態があまり良くなっていかないことについて、フランスだったらもっとこんなことができたのにというようなことがたくさんあって、10年前よりフランスでフランスの子ども家庭福祉について勉強したり現場に通ってフランスの支援方法を日本に伝えようとしてきました。でも、書いたり口で説明してもなかなか伝わらないような気持ちもあって、この漫画を日本語版で紹介して、どのようにエデュケーターの人たちが家庭を支えてるんだよ、子供のことだけではなくて親の力にもなることができるんだよっていうことを伝えたいと思っています。今80人の方にご支援いただきました、どうもありがとうございます。こちら先行予約が出版に必要な費用の100%集まったら出版できるというものです。ぜひ読んでみたいという方、ご支援いただけるとありがたいです。

原作者パボさん自己紹介:

20年間エディケーターとして働き、今は漫画家をしています。

安發:

エデュケーターというのはソーシャルワーカーの資格の一つで、ソーシャルワーカーの資格がフランスに13種類国家資格がある中でエデュケーターは児童保護と障害、成人の自立支援の分野を3年間かけて学んで国家資格を受けます。

パボさんはまず施設で働いてその後在宅支援といった形で親子を支える仕事をしてきました。

進行松岡:

ターラちゃんはすごく大人びていますよね。

安發:

8歳なのですが、お母さんを頼れない代わりに、このエデュケーターがいることでお母さんに言えない悩みだったりお母さんとのことで困ってることだったりを話すことができるというシーンが出てきますね。

松岡:

エデュケーターというと教育というイメージがあって、こうしなさいっていう立場の人かな、というふうに思ったんですけど、そうではないんですね。

パボ

ああしなさいこうしなさいで済めばいいんですけれど、そうではなくて実はもっと複雑、あれをしなさいこれをしなさいと人間に言ってうまくいくものではないからです。

関係性について私たちは関わっていきます。つまり親と子どもと一緒に、どういう方向で親子の関係性が変化していけばいいかということについて親子と一緒に探します。何かしら子どもが困難を抱えている家庭に入るので、子どもが困難を抱えているというのは何か家庭の中でうまくいってないことがある、不満なことがある、そういった時に家族のそれぞれがみんなより過ごしやすくなるために私たちが入っていきます。

安發:

私は在宅教育支援の調査をしているのですが、ほとんどの子どもが、学校で例えば勉強に遅れがあったり、学校でうまくいかないことがあるといったことを理由に在宅教育支援という親も子も支える支援が始まっています。

松岡:

パボさんはどうしてエデュケーターになろうと思ったか教えていただけますか?

パボ:

最初は中学校高校の歴史の教師をしていたんですけれど、その時にそのうまくいってる生徒たちにとっては自分を特に必要としていない、必ずしも自分じゃなくていいんじゃないかと思う部分があった。一方で学校でうまくいってない生徒たちにとっては週3回授業するぐらいでその生徒たちの力になることができないと感じていた。その子どもたちが抱えてる問題というのは勉強に取り組めないとか学校に来るのが辛いとか、それよりもずっと広いことで、そして家について悩みを抱えてることが多かったからです。子どもが抱えている悩み全体に取り組むには、学校でできることはとても限られている。学校というのは子どもがうまくいっていないことがある、その症状が目に見える形で現れる場であっても、それを解決するための場は学校ではないと感じていました。

歴史の先生をしたあと大学に4 年間戻りエデュケーター国家資格の勉強をし直して、今度は被害にあっていたり危険に瀕している未成年を対象とする児童保護の世界で働くようになりました。

人間というものをもっと包括的に捉えたいと思いました。人間というのは生物学な面だけではなく心理面そして社会面その3つから成り立ってるわけです。その社会の部分は人間関係です。私は人間科学をアクションに移すということがエデュケーターの仕事であると考えています。人間科学というのは歴史や人類学や社会学、哲学、そういったものが全て合わさった中で、人間が不幸になったり人間が加害者になったり被害者になったりしているわけです。なので、そういった「うまくいかないことがある」「うまくいかないことがあってこの子どもがその症状を発している」としたら、人間科学でその子どものためにできることは何だろうかということに取り組むのがエデュケーターだと考えています。

松岡:

エデュケーターはどういう家庭に派遣されるのですか?一人で何家庭を担当しますか?

安發:

私の調査から言うと、支援最初のきっかけは学校ということが多く、例えば夫婦喧嘩の声が聞こえたっていう通報がきっかけであったとしても、学校で子どもの調子が悪いということがわかると支援の対象になるということが多いです。例えばレゴで遊ぶ時にいつも「助けてー!」と叫んでいる人がいて、誰か助けに行くという遊びをしているということが支援開始のきっかけだった子どもがいました。エデュケーター一人で子ども26人と県で決まっているので兄弟がいたりするから1人十数家庭を担当することが多いです。私は同じ家族を継続的に2年間近く調査してるのですが、1年半から2年ぐらいで支援が終わる家庭が多い一方で、もっと長期間、例えば親の精神疾患が改善しないなど長期間支援が必要な家庭もいます。

在宅教育支援は親が希望して、例えば子どものことで手を焼いていますとか子どもが反抗期でうまく関係性が築けませんとか、別れた両親の関係性が良くなくてそのことを子どもが気に病んでるけどうまく子どもと話せませんとかそういう場合もあります。

ターラちゃんが受けているのは、親が望んだわけではなく、子ども専門裁判官という児童保護を専門とする裁判官が、今の状況では子どもの権利、子どもの安全や健康が守られていないから在宅教育支援を命令しますと裁判官の命令によって始まっている支援です。そして 1年後に、支援の結果改善したかどうか確認します。

子どもは現在、危険な状況ではないけれども、心配な状況で、しかし危険な状況まで放置してしまったとしたら子どもを親元から離して施設だったり里親だったりに措置しなければいけなくなるので、そうではなく、親子の状況をもっと良くすることができないか、子どもの状況を改善させようということで在宅教育支援が始まります。もちろん親は最初は望んだわけではないので難しいのですが、信頼関係を築くためにエデュケーターの人たちが、私たちが何かを批判したり、罰するためにいるわけではありませんと、親のことも子どものこともその支えるためにいるんですっていうことを伝える必要があります。

パボ:

支援の方法はオーダーメイドです、家族によって、暴力的な父親だったり、すごく優しいけれど子どものことにうまく取り組めていない親というのでは違います。中には子どもに対して暴力的な言葉を使う親もいますし、アルコールの問題がある親、精神疾患の被害に遭っている親、そういった状況があると、子どもにとっては世の中、外の世界とつながっていくことに難しさが出てしまいます。例えば子どもが学校に行かないということについて親がどういうふうに対応すればいいかわからない、これも「危険」として私たちは捉えます。なぜかというと、子どもの将来を危険にさらすような状況だからです。子どもが学校に行けるだけ十分安心できるためにはどのような準備が必要なのか親と一緒に探します。「親をすることの支援」といった言い方をします。そして1年後にまた子ども専門裁判官のところに「これから先まだ在宅教育支援を継続する必要があるのかどうなのか」と話しに行くのですが、いい仕事ができた時にはほとんどの親が「あと1年お願いします」と、最初は望んでいなかった親だったとしても、エデュケーターがいることが家庭にとって危険ではなくて、親としての役割を補強してくれる存在なんだということが伝わって「もう1年お願いします」と言ってもらえることが多いです。

松岡:

ターラちゃんは学校に行っていますか?学校に行けていない状態なのでエディケーターが入るのでしょうか?

安發:

フランスの場合は月2 日以上学校を休むともう不登校の扱いで親子共に、状況を確認して 支援しなければいけない、また全寮制の学校に入るか施設から学校に通うか検討されます。

ターラちゃんの場合は、お母さんが幻覚が見えるということで、かなり小さいうちから施設措置されていて、そして家に帰るにあたって、お母さんに精神疾患があるので、2人で暮らしていくには心配があるから在宅教育支援という条件つきで家に帰っていいよと施設から出られたという状況です。

松岡:

学校制度についての質問で、日本の学校制度はかなり画一的で学校に行くことでとても狭い価値観を植え付けられていますがフランスの学校制度に日本の学校のような課題はないのでしょうか?

安發:

学校はすごく厳しくて3歳から義務教育なのですが、その学年の内容を履修できていないと落第してしまいます、なので、学校で落ち着きがないとか宿題ができていなかったとかそういうことについて早いうちから専門職が入っていきます。

パボ

義務教育は16歳までなので、16歳までは学校に行きます。もし一般的な学校が合わない場合は職業コースの方を勧めてその子どもに合った学び、例えば高校の職業科など、その子どもに合った教育が何なのか探します。どのような集団の学びにも合わなかったとしたら、その家庭に誰かが通って教えるというような形もありますけれど、それは非常に極端な話です。ただ不登校という現象は日本に比べてそういう症状を示す子どもはフランスは少ないのではないか。一方で学校で反抗するような子どもはいます。一日中座って話を聞くことについて十分教えてもらうような機会がなかったら、そういうことができなくて反抗的な態度に出るということもあるからです。エディケーターの仕事としては学校に行って学校の様子を聞くということもありますけれども、中心的な仕事は学校のことではありません。

安發

私自身が調査の中で、例えば学校でいつも笑いを取りにいって授業を妨害する子どもがいました。でもエデュケーターが、お母さんがちゃんと病院に通ってお母さんの調子が良くなるように介助の人が毎週病院に連れて行くということを手配したらもう授業中に笑いを取るような行動をしなくなり、子どもについての心配はなくなったということもありました。そういった意味で、家庭の状況を良くしたら子どもの症状は改善するという考え方がフランスではされていると思います。

松岡:

エデュケーターは公務員ですか?という質問も来ているのでその後続けてエデュケーターの仕事を説明していただきます。

パボ

エデュケーターの仕事というのは、どのようなメソッドを使えばいい教育ができるというようなものではありません。テクニシャンではありません。アドバイスをすることはできます。しかし、私たちが対象にしているような子どもたちは暴力の被害を経験していたりトラウマがあったり、でもその起きていることについて理解できないというような状況にいる子どもが多いです。なぜかというと、子どもは自分の親は、両親のことは好きなわけです。人間の子どもは20年間は親のことを愛せないと独り立ちできないわけで、親のことを愛する気持ちがないと生きていけないわけです。なのにもしその両親が暴力的だったりした時に、その自分が愛する両親から身を守るということがどういうことなのか、考えが整理がつかないということがあります。なので、私が大事だと感じるのは、その子どもにとって自分の人生がどういったものなのか、その説明を自分で見つけ出すということです。

安發

エデュケーターは児童相談所など公務員として働くこともありますけれども、在宅教育支援というのは民間団体です。

公務員のソーシャルワーカーは必要なケアをコーディネートする係で、民間団体にいるエデュケーターやソーシャルワーカーの人たちがより専門性のある継続的な支援を提供します。公的機関から委託をされて、施設や里親や在宅教育支援サービスを民間団体が県のお金で実施します。

パボ

親にとっても子どもにとっても、人間にとって難しいのは、理解ができないことです。例えば自分の子どもがなぜ家から出ないのか、なぜ学校に行かないのかっていうことが理解できない、または子どもが親のことを理解できない。「うちの子は普通じゃないのか」「親がこういう行動を取るのは何でだろう」ということが理解できないことはすごく難しいことです。子どもが学校に行けない場合はエデュケーターが一緒になんで学校に行けないんだろうと考えます。自信がないのか、それとも彼自身に何ができる、彼にどんな価値があるといったことを十分支えてもらうことができていなかったのか、自分に何ができるということについて自信を持つような機会が十分なかったのか。

私たちがまずすることは親がどのように自分の子どもを見ているのかということ、子どもがどのように自分の親を見ているのかということについて働きかけをしていくことです。子どもはよく親との関係がうまくいかないのは自分のせいだと考えます。子どもは親のことが好きなので、自分のせいでこうなった、うまくいかないんだと考え、自分をより苦しめるような行動をとります。それが不登校だったり引きこもることだったり自殺だったりするわけなんですけれど、これから先、親が新しく人生を生き直す、子ども自身も新しく生き直すためにはこの親が子どもを見る目線、子どもが親を見る目線ということについて働きかけて変えていく必要があります。変えていく中で、これまで起きていたことについて違った態度をとり、違った姿勢で生きていくことができるようになるからです。やり直しをこれまでと違った形でしていくことができるからです。そのためには自分自身が変わるという こと、関係性を変えるということが「許可される」状況にしなければいけません。私たちが「こうあるべき」ではなくて、親自身そして子ども自身が「どのようになりたいのか」っていうことを実現するための力をつけていけるように支えるということがエデュケーターの仕事です。

パボ

エデュケーターにとっては何が真実か知ることではなく、その子ども自身、親自身にとってそのライフストーリーと共に生きていくことができるという自分の歴史のストーリーを一緒に作ることです。なので最初その家族にとっては「めんどくさい」と思われるのは、「さあ皆さんテーブルの周りに集まって座ってください、たくさんの質問をお互いにしてください、それに答えてください」っていうようなことをします。中に子どもが何で親がこの家族を作ろうと思ったのか、自分が生まれたのは望まれて生まれているのかそれともなんとなくこうなったのか、そういったことさえ何も知らない子どもたちがいます。日本文化の中では羞恥心だとか、起きたことについて、あまり都合がいいことではない場合は話さないといったことも文化としてあるのではないかと私は思っているんですけれど、サイレンスつまり話さないということは、結果的に加害者を守り被害者を守らないということが多いです。誰も何も言わない状況で弱い人は耐え続けていて、危険にさらされ続けるということが起きる。誰も話さない、うまくいってないことがあることについて話さない結果、子どもが学校で症状として、例えば学校に行かない、学校で勉強に取り組むことができない、そういった症状を示します。私たちエデュケーターが子どもと親の心の、お水がいっぱいになってしまった花瓶を、一度お水を流して空っぽにする、溢れ出ないようにすることができます。自分の人生について理解することができる、なんで親が暴力的なのか、それは親自身が暴力的な環境で育ったのか、それとも何かすごく嫌なことがあったのか、そういったことを理解することができるということが安心感につながるからです(自分が悪い子どもだったから暴力的な態度をとられたわけではないとわかる)。

松岡

日本では虐待のケースに介入する支援に入るというとエスカレートしてしまうケースがよくあるということで、フランスではエデュケーターが家庭に入ることで一時的にでも虐待がエスカレートしてしまうことはないのですか。

パボ

おそらく日本の家庭を支援してる人たちにどうしてより暴力がエスカレートすることがあるのかということを聞いてみる必要があるというふうに思う。エデュケーターは家庭に対し敬意を示し、家庭のことを守ろうとしているのに、その反対の反応が起きるのはなぜなのか。もしかしたら日本では家族の誇りという考え方があるかもしれない。

フランスの場合は革命の時に王様の首を切ったっていうこともあって「難しいことがあったりうまくいってないことがあったとしたら、そのことについて話さないと」といった考え方はあります。最初父親が怒ったり泣いたりというようなことはありますけれども、子どもが外、路上で被害に遭うよりも、家庭内で暴力に遭うことの方が多いわけなので、親が怒るからと言って入らないわけにはいきません。父親が怒ったりすることがあったとしても、私たちは子どものために動いてます。子どもがもしかしたら危険な状況にあるかもしれないのに、怒らせるから行かないという選択はできません。もしそれで子どもの状況がより危険にさらされるようなことがあるとしたら、それは裁判官が子どもを家庭から離すということを検討しなければいけません。ただ、私たちが在宅教育支援という形で入っていくのは子どもが家で暮らし続けることができるように問題解決するということを裁判官から頼まれたからです。

パボ

フランス人に自分の漫画が読まれていることだけでもすごく驚いてるのに、日本人にまで読まれるかもしれないというのは、すごく自分にとって大きな冒険で、特にこの小さなキャラクターが日本の人に読んでもらえるというのは驚きなんですけれども、アーティストとしては、エデュケーターという仕事についていなければ、私たちは似ているような人と出会う機会が大半なのですが、エデュケーターは自分とは全く違った人に出会う機会があるとても素晴らしい仕事です。社会のために戦っていくっていうことについても、エデュケーターの仕事はとても大事な学校だと感じています。違いを受け入れ合うだとか、誰もが弱みを持っているわけで、お互いの弱みを互いに受け入れ合うということについても、素晴らしい 職業だと感じています。そして誰かに助けを求めるというのは一番勇気がいることです。そういったことについてもエデュケーターという仕事はとても素敵な仕事だと感じています。

安發

質問の中に離れて暮らしたい子どももいるんじゃないかということについて、フランスの場合は離れて暮らしたいと言ったその日から離れて暮らすことができるので、離れて暮らしたくないけれど家庭で難しい状況だという時のこの支援があります。エデュケーターはもともと戦後に仕事帰りにいわゆる浮浪児ですね、メトロの出口にたまっているような子ども若者たちを社会人ボランティアグループが家に連れて帰ってお風呂に入らせて家に寝泊まりさせて近くの商店とかで仕事を与えたりしていた。そんな中で子ども専門裁判官と小児精神科医の人たちが少年院の中だったり精神病院の中ではなくて地域にいるにうちに子どもたちを支えるべきだと主張し国にこのエデュケーターの仕事の必要性を伝えたという経緯がありました。私は日本でワーカーをしていた時に、してあげたかったけれどもできなかった、ということがすごく多かったり、子どもたちに「他に何もないの」って言われたことがあったり、日本で十分できなかったことがたくさんあって、後方支援と思ってフランスのこういった「いいアイデアがある」といったことを発信していきたいと活動しています。今回の企画についても、これからもフランスの支援について私自身が話すような機会などホームページにアップしていきますのでこれからもご支援どうぞよろしくお願いいたします。日本もみんなみんなが手を取り合っていけば、すごくいろんなことが改善していくん

じゃないかと思っています。