トークイベント質問回答

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27日に実施したオンラインイベントは既に500回視聴されていて関心の高さを感じています

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トークライブの質問の回答

エデュケーターの仕事について:

エデュケーターは1948年よりある資格です。

公的機関はコーディネート役、民間機関が専門的な支援を実施します。パリ市では5つ在宅教育支援を実施している民間機関があって、県から子どもごとに委託費が支払われます。私の調査先機関ではパリ市と近郊で900人の従業員で一年に1万1000人の子どもを支援しています。

家庭の生活レベルではなく児童保護の「予防」目的で市民法375条「子どもの健康、安全、精神面が危険やリスクにさらされているか、子どもの教育的、身体的、情緒的、知的、社会的発達状況が危険やリスクにさらされている場合」において「心配やリスク」がある子どもが対象です。「危険」がある場合は保護の対象になります。親や環境ではなく「子どもの状態」、子どもの権利が守られていることを確かにしようとしています。7割が子ども専門裁判官という裁判官資格の上に2年間児童保護と非行の専門訓練を受けている裁判官の命令で支援が決定します。非行の場合は非行分野の在宅教育支援エデュケーターがいます。支援命令が出ているのに支援を無視する親がいたとしたら、子どもを守ることができないので保護することも考えられますが、説明すれば支援が子どもにとってより良い状況を作るためと理解されるので実際に無視するようなケースは見たことがありません。子ども自身がエデュケーターに出会い、この家では難しいから全寮制の学校に入りたいと言うことは多くあります。また、母は毎日相談の電話をするくらいエデュケーターを頼るようになっても父とは連絡がとれなくなるということも残念ながらあります。

学校からの「心配」な判断が契機であることが多く、夫婦喧嘩の通報など他の契機であっても、学校で心配があれば支援の対象となります。学習の遅れや心配な行動などです。

エデュケーターは1人で子ども26人、約十数家庭を担当しますが、2-3人担当者がつくことも多くあり、さらに多職種チームで家族を担当します。例えば1つのチームを構成するのはエデュケーターを中心に、ソーシャルワーカー、社会家庭専門員、学習エデュケーター、幼児エデュケーター、心理士2人(週2日)、小児精神科医(週1日)、異文化メディエーター(週1日)といった具合です。方針はチームで決定します。家族にとっても内容によって話しやすい相手がいたり1人の担当との相性に左右されずに済みます。

1年ごとに状況の再検討がおこなわれ、7割は3年以内に終了すると言われています。

Q:日本にエデュケーター制度がないことについてどう思いますか

→日本はソーシャルワーカーになんでも解決できることが求められていますが、フランスではソーシャルワーカーに13職種あり、3年間1週間現場実習1週間論理という学びを積み重ねても実際現場に出ると現場ごとに利用者が必要とする専門的知識や技術は異なるので、最初の年は7-8種類研修を受けることが必要になります。医療で例えると実際はかかりつけ医だけでなく専門医が必要な分野だと思うので、専門性について日本も見直す必要があり、かついくつもの専門職によるチーム対応も重要であると考えます。さらに、実際毎週一緒に時間を過ごす中でしか家庭内のダイナミズムを変えていくのは難しいということも検討されてほしいです。

Q: エデュケーターは、どんな「職種の人」「(国家)資格を持つ人」と連携をとりながら、職務を進めていきますか?

→例えば精神疾患のお母さんと娘の周りにはこのようなコーディネートがされていました。

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エデュケーターについての記事

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ある家庭への在宅教育支援の例

学校について:

3才から16才が義務教育で3才から落第があります。義務教育機関は教育とケアと福祉が全ての子どもに行き届いていることを保障する期間と位置付けており、その役割を専門職に担わせています。ただ、学区の学校に限らず子どもに合った場所を探すという柔軟な方法もとられています。

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発達段階に合わせ国で用意している仕組み

他:

Q: 一時的にでも虐待がエスカレートしてしまうことは無いのでしょうか?もし、そのようなケースがある場合には、どのような対応になるのでしょうか?

→児童保護分野の支援であるゆえ、電話でいつでも子ども専門裁判官とやりとりできる状況にあります。危険があれば即日保護されます。専門職は「親のことを支えたいと思っている」ことがちゃんと伝われば、どの親も子どもにはより良い成長をしてほしいと思っているので協力体制を築けると言われています。パボさんも最初は親が望んで支援が開始するわけではないが一年後の裁判では親の方から「あと一年お願いしたい」と言ってもらえると話していました。虐待は「望んでしているわけではないけれど他に方法がとれないくらい行き詰まっている」という状況なので、親の優先順位通りに一つずつ解決を手伝います。大家さんともめている、家の水漏れが解決しない、歯の治療をしなければいけないけど手続きができていない等..

こちらのリンクご覧ください

Q: 子ども自身が、エデュケーターに親から離れて暮らしたい、ということはありませんか?「子どもが親を愛するもの」というのは幸せな家庭に育った人が決めつけている、という考えはないのでしょうか?

→未成年が望めば即日保護されます。実際10代は子ども自身が希望する場合の方が多いです。在宅教育支援の途中に保護を希望する子どももいます。親に対する気持ちの整理をエデュケーターが手伝います。パボさんによると未成年で親とうまくいってほしいと願わない子どもはいないのではないかということです。

Q : 「親としての役割を保証してくれる」その横にエデュケーターがいるというのが、印象的でした。3歳以前の子ども達への配慮はまた違う方々が行っているのでしょうか?

→在宅教育支援は学齢期である3才以上であることが多いです。それは、3才未満は保健所にあたる組織が家庭への定期的な支援や、社会家庭専門員という「家事支援+家庭支援+ソーシャルワーク」をおこなう専門職を週2時間x2回など派遣したりもしているからです。

Q : 先ほどのお話にあった民間団体とは、例えば、NPOのような組織ですか?

→フランスではアソシエーションという組織が担います。利益の分配以外の目的のためにその有する知識と活動を共同のものとするグループと規定されています。

NPOとの違い (clair HPより引用)

  • 契約性1901年法は、アソシアシオンを「制度」としてではなく、諸個人の意志の合致である「契約」として捉えた。従ってアソシアシオンは、最低2名の構成員で設立することができる。ドイツの登録非営利社団が最低でも7名以上、ベルギーやルクセンブルグでも3名以上の構成員を必要としており、この個人主義的な組合的構成の貫徹は、1901年法の重要な特徴の一つであると言える。日本のNPO法人は、10人以上の社員が必要である(NPO法第12条第1項第4号)。
  • 非営利性・利得の不分配アソシアシオンは、その事業による収益を構成員の間で分配することができない。しかし、その本来的な目的追求のために、手段として収益を目的とする経済活動を行うことはできる。またアソシアシオンの目的は公益に関連している必要はなく、構成員の共益のみを目的とした団体もアソシアシオンである。従って、活動内容に関する規定は存在せず、公序に反しない限りいかなる目的のアソシアシオンを結成することも可能である。これに対して日本のNPO法人は、営利を目的とせず、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的としている(NPO法第2条)。また活動内容は、法別表に掲げられた16の活動及び団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動とされている。これらの活動に係る事業に支障がない限りにおいては、「その他の事業」を行うことができ、この場合において収益を生じたときは、これを本来の活動に係る事業のために使用しなければならない(NPO法第5条)。
  • 知識・活動の共有アソシアシオンは、知識・活動を共有することによって、ある目的を達成するために設立される。その目的達成のためには、物質的手段・資源も必要となることがあるが、財産の所有はアソシアシオンにとって必要条件ではなく、知識・活動の共有を通じた人的な結びつきによって、その目的を達成するということに重点が置かれている。この点は税法上も反映されており、優遇措置の基準として法人格そのものよりも活動目的が優先される。

アソシアシオン契約に関する1901年7月1日法(Loi du 1er juillet 1901 relative au contrat d’association

http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/344.pdf

Q: 日本では何かしらの福祉の支援を受けることに対してスティグマが強く、支援を拒否したり、隠したり、困っていても助けてと言えない雰囲気があると思いますが、フランスでは、何かしらの福祉支援を受けることに対するスティグマ、ハードルは日本より低いでしょうか?

→転居したらかかりつけ医とソーシャルワーカーにまず会って安心という人はいますが、高所得層は困っても福祉事務所や児相に相談するのではなく優秀な家庭教師を雇ったりするそうです。地方では特に、家庭教師よりは国家資格のあるエデュケーターを個人的に雇って自分たちの子どもの教育を任せている親がいるという話も聞きます。


パボさんの話で印象的だったのが、在宅教育支援のエデュケーターは家族にとっては新しい親戚のおじさんができたようなかんじであり、エデュケーターができることは「子どものことを好きになる、そして親のことを好きになること。そこから愛が広がっていく」と言っていたことでした。エデュケーターの養成学校でも何度も「子どもを親を大好きでい続けることが第一」「自分に何ができるか聞く」と教わったのを思い出しました。