フランス警察未成年保護班

フランス警察未成年保護班

フランスは、重要なポイントについてそれぞれ専門の機関を作ることによって、問題がそのまま放置されないようにし、かつ各関連機関に情報が共有されるようにしている。専門の職種もある。
「子ども裁判所」「心配な情報の収集と判断を担当する県の機関」「 児童相談所に預けられた子どもの状況を調査検討する学際的、複数機関横断的委員会 」「国立児童保護研究所」、子ども裁判官、児童保護専門医などである。

今回は警察の未成年保護班について紹介する。
近隣の人の通報や、学校で子どもが「親に叩かれた」と言ったとき出動するのが未成年保護班である。

未成年保護班がいることのメリットは、

  • 子どもの事情聴取専門の警察がいること
  • 子どもが被害届を出さなくても、調査、裁判所につなげる
    子ども裁判所とやりとりのうえ、児童相談所の施設に保護、それと同時に調査し裁判資料を用意する。そのことによって、兄弟間の暴力でも、加害者は罰せられる。
    私の参加した児童保護施設の会議では、数年前に兄から性的強要されて入所している女性について、成人である18歳の誕生日と同時に、兄からの慰謝料である84万円が妹である女性の口座に児童相談所経由で振り込まれたということが議題の一つに上がっていた。女性は知的能力が低く、兄のことを「かっこいいし、合意があった」と言っているのだが、兄は慰謝料以外にも治療プログラムへの参加が義務づけられている。
  • 子どもが加害者であるいじめや嫌がらせについても大人と同じように取り調べし、裁判所に調書と子どもを引き渡すことで、悪化することを防ぐ。

未成年保護班の具体的な活動について、2019年10月7日にZone Interdite (M6)というテレビ番組で紹介された具体事例をもとに紹介する。
(Brigade des mineurs: au secours des enfants en danger)
(南フランス、マルセイユの近くのToulon市の未成年保護班へ1年間密着取材した内容)

全国400ヶ所に警察未成年保護班が設置されている。

Toulonでは5人チーム。うち4人はこの道11-30年と経験豊富。一年間児童保護施設で働いた人も。志願者はそう多くない。小さな子どもへの事情聴取、思春期反抗期の子どもの事情聴取は使うべき言葉とるべき態度、専門の訓練を受けていないと難しいからである。

月1-2回はリスクや危険な状況に置かれているという子どもの通報を受け裁判所命令で子どもの緊急保護をしている。それとは別に、毎日平均3件新規の相談を受けている。聞き取りは全てビデオに撮って管理している。

緊急保護

例)20歳の母の新生児。保健所からの定期的に体重を量りに来ていないという連絡と、衛生状況に問題ありとの通報。去年既に新生児を亡くしていることもあり、裁判官命令で予防のための保護の決定。
→この際も専門部隊なので乳児院と連携しミルクについて母に確認するなど細やかなケアもしている。

いじめ

全国で年間7万人のいじめを未成年保護班が扱っている。
例)11歳の女の子が、学校でのグループのインスタに「バカ、アホ」など悪口を書かれたと警察に来る。未成年保護班は聞き取りの上、別に加害者を呼び出し、確認。加害者の女の子は反省していると泣く。後日加害者は裁判所に呼び出され、検察官より、「法律の再確認」(rappel à la loi)を受ける。罰ではないが、裁判所に呼び出し今回した内容が罪であることを確認させることで再犯を防ぐ。
子ども裁判官によると、「即座に対応しなければなりません。子どもについては棄却はありません。一回のいじめでも、裁判所で対応することで再度同じことが起きたり悪化することを防ぐのです。大きな問題は、その前に何度も起きる中で発展しているので、なるべく早く対応することが重要です」
→一回の嫌がらせでも発展を防ぐため時間をかけ、複数のステップを踏み扱っている。
(安發注:スイスは必ず罰を与えることで自分のしたことについて考える時間を与える。学校登校前に公園の清掃員の手伝いを週何回何ヶ月+同じ種類の事件の裁判の傍聴5回など)

ティーンエイジャー同士のトラブル

例)17歳同士、クラスで男子が自分の性器を何回も触れとうるさく言うので、女子は更衣室で男子の性器を触りこすらされた。女子は「嫌だった」と泣き、男子は「完全に何もなかった、そんなことはしていない」と否定。男子と女子一緒の部屋で警察も男性と女性二人で聞き取りをする。最後まで男子は否定するが彼女が苦しんでいる様子を見て男子になぜこのような事態になったか考えさせ、警察も交えた話し合いの機会にする。真実がどうだったかはわからないこともあるが、二人だけのトラブルとして発展させない、女子が誰も助けてくれないと思わないでまた相談できるようにすることが重要であると話す。

未成年の性被害

全国で毎年2万人の未成年性的被害者を警察は保護している。

例)知的障害があり断りきれなかった女の子を車で連れ去り自分の性器を触らせた男性を市内の監視カメラで車両番号から割り出し逮捕する。

例) 16歳の高校生と47歳の妻子持ちの中学時代の先生との恋。16歳も47歳も中学時代の性交は否定。自由恋愛を主張。16歳は「心配しないで、ほっといて」と訴える。法律上は15歳から合意の上好きな相手とセックスすることができるが、教師と生徒など監督すべき立場の場合は法律違反になる。双方が中学時代の性交については否定するので、証拠はつかめず、子ども裁判官に相談後、検事に書類は送られなかったが警察から教師へ注意。「愛人として続けられると思った」という教師に対し「それは妄想です」「16歳を自宅に連れ込むことの重要性、彼女の女性としての人生にあなたとの関係が与える影響は大きい」と警察は諭す。

未成年が加害者となる性的犯罪も増えている。全体の1/4は未成年である。ポルノが出回り、現実との境界線がわからなくなっている若者がいる。性的事件の35%は家庭内で起きている。


例)15歳の経済的に豊かな家の男子、成績優秀。携帯にポルノがたくさん入っているということで心配だと連絡がある。そこで聞き取りのなかで、6歳半の妹に性器を触らせ、自分も妹のを触っていたことがわかる。裁判所で、治療を受けることが命令された。
被害者の妹にも個別に説明、兄をかばおうとする父親と母親も個別に警察より起きたことの重大性を説明する。
例)父親からの性的虐待。11歳の子が最初の聞き取り時は「何もなかった」と言うが、2回目は全部話す。警察はその場で少女をほめる「言うことができてがんばったね、自分のことを強かったと誇りに思うんだよ。決して恥ずかしいと思わないこと、自分は何も悪くなかったんだからね」そして、夫が逮捕されて一人で子どもたちを抱えることになった母にも「父親がいなくなったことについて決して彼女のせいにしないこと、彼女が自分をとがめるような状況にしないこと、彼女の将来について、女性として生きていくことについて考えケアすること」などその場で注意している。

スポーツ選手の11%は性的暴力の被害に逢ったことがある。

例)かつていとこの夫から性被害を受けいたラグビー選手はスポーツ界での性被害を予防し、被害者を助ける団体を立ち上げ活動している。

スポーツ省がこの団体に委託し全国のスポーツのエリートに対し性被害を予防し被害者を守る講習を受ける機会を作っている。未成年保護班のことを知らない小さな子どももいるので、助けてもらう方法を教える。テレビでも青少年への講習の後、4人の子どもが講習後講師に相談をした。1人はセクハラ、3人は触られることがあることについてだった。自分で警察に行くのは勇気がいることもあるので、団体は被害を警察に申し出る手伝いもする。

団体 Colosse aux pieds d’argile : https://colosse.fr/

未成年保護班の警察は、子どもたちは重い荷物を背負ってここに来るので「ここに全部置いて行きなさい。あとは私たちが引き受けるから」と伝えている。