『親なき子』北海道家庭学校ルポ
私は2000年代の学生時代に首都圏の児童自立支援施設でボランティア活動をしていた。
首都圏にこんな場所があるのかと思えないくらい、雑草が生い茂り、廃車が雑草に覆われたまま放置され、木造平屋の畳のイグサが抜け底が見えている8畳間に10代の男の子たちが4人ずつ暮らしているような場所で衝撃を受けた。その子どもたちと長く付き合う中で、あまり社会的資源も揃わないまま社会に出て行かざるを得ない様子、保証人がいないのをいいことに最低賃金以下の労働を強いられている様子も目の当たりにした。
当時日本では、研究分野で出ているものを現場の人は読む余裕がなく良い人材を雇う予算もない、国はまだ社会的養護にあまり関心がなく、国・研究・現場が連携して取組んでいるとは言い難い状況だった。
自分の通う場所が特殊なのか、他の児童福祉施設の知りたくて全国十数施設を訪問、短期滞在を繰り返す中で、保育士、教員、福祉職、県の事務職など担い手も内容もさまざまな施設に出会った。そのなかで、北海道家庭学校は職員が腰を据えて子どもたちと向き合っており、子どもたちも自分の将来を懸命に模索しながら「将来同じ思いをする子どもたちが生まれないよう話を伝えてほしい」と話をしてくれた。
その後、スイスの施設も訪問し、 福祉を必要な人を社会がどのように支えるか、子どもたちにチャンスが与えられる仕組みを模索する。
この本では、北海道の施設、スイスの施設に暮らす子どもたちの話が紹介されている。
前の記事へ: 『「健康で文化的な生活」をすべての人に』