地域の居場所と不登校

地域の居場所と不登校

このコーナーは『ターラの夢見た家族生活』をご支援いただいた方から届いたメッセージと安發のお返事を紹介しています。同じ現象に日本の福祉と、フランスの福祉はそれぞれどのように対応しているのか。

互助の活性化を目指している「地域の居場所」ができること

フランスでは親族による子育てが難しい時は、エデュケーターという子ども支援の専門家が子どもの養育に関わるそうですね。

私は行政保健師の時に行政ができる限界を感じていました。また仲良しだった祖母の晩年を親族として1人で支えた経験から、地域住民の互助が活発になるように「地域の居場所さっちゃんち」を設立・運営しています。私たちが目指していることは、すでにフランスでは制度化されていることを知り、フランスの福祉をもっと知りたい!と思いました。

日本では、子育ても介護も世帯内あるいは親族内で行うには、限界を感じている方も多いのではないかと思います。そこで、住民が出会う新しい仕掛けを作り、必要な時は助け合える関係性を生み出したく、2016年に存命中の祖母宅でさっちゃんちを始めました。最初は、月1回の英会話サークル、1年後に地元の鎌倉野菜を販売する朝市を追加、さらに2020年からは、火曜・木曜日を家屋と庭を自由に使える自由利用日としました。今では、活動趣旨に賛同して運営のために働いてくださる方(無給のスタッフ)も増え、常時留守番役をしてくださる方や、特技や関心を生かした講座や集まりを開催してくださる方もいて、温かな時間が流れています。

最近、不登校の親の会を主催しているスタッフの1人が、息子さんの小学校の管理職の方に関する考えをnoteに記しました。その管理職の方は、「学校は社会の厳しさに耐える力をつけるための場所。たとえ低学年であっても、辛いことや苦しいことを頑張って乗り越えさせるべきである」というようなお考えをお示しされたそうなのです。スタッフが無力感に苛まれたのはもちろん、私もフランスの子育て支援体制を知った後でしたので、余計に、教育は何を目指しているのか、教育を受ける権利はどう保障するのか、日本において「市民社会」とはどういう意味を持つのか、などと考え込んでしまいました。

現在、スタッフの子どもが在住している自治体では、就学する学校を自由に選択することはできません。子どもが学べる場所の選択肢をもっと増やすべきではないかと思います。さっちゃんちには、教育の専門家はいませんが、棟梁(とうりょう)の叡智が注がれた空間と、自発性を尊重する人たちが紡ぎ出す温かい雰囲気はあります。学ぶ場所の選択肢を増やすために、フランスの支援体制をヒントに、さっちゃんちでも学校に行かれない子どもたちが来やすくなるように準備を始めようとしています。

地域の居場所さっちゃんち

スタッフあささんnote

安發お返事

フランスのある不登校支援校に調査で3年ほど通いました。県の予算で運営していて無料で通え11-18歳の子どもが来ていました。笑ってしまったのは、朝8時半に校門が開くのに8時から寒い歩道でたくさんの子どもたちがおしゃべりをしていることでした。君たち本当に不登校だったことがあるの??好きな学校だったら喜んで行くんですね!ここでは子どもたちは自信をつけ1年半-2年くらいで一般の学校に戻って行っていました。「クラスメイトが兄弟のようで、先生たちが親戚のおじさんおばさんのよう」と言っている子どももいました。

フランスの公立校についても批判的なことはたくさん言われています。子どもたちが勉強で忙しすぎる、少しついていけないだけで特別なプログラムや治療を勧められる..

一方で、子どもに選ばれる学校でなければならないという考えがあります。 子どもはある程度学校を選択でき、必ずしも学区に限らず自分の希望の学校に通うこともできます。例えば私の区にはインターナショナルセクションがある幼稚学校、小学校があり、フランスの教育と日本の教育と両方受けられるので、学区でなくても勧められました。在宅支援を受けている子どもたちも、特別繊細だったり、小さいとき障害があり遅れがあったり学びに凸凹がある子どもが多くいるので、公立でも9-12人学級の少人数制のところに転校したりする機会にとても調子が良くなる子どもはたくさんいます。

いじめがあると加害者が転校処分になります。3歳から義務教育ですが幼稚学校から公立で全寮制の学校があって、子ども自身が全寮制で週末家に帰る生活を選ぶことも特に10代ではよくあります。 また、どの職業もポストごと採用で、つまり教職員は校長で自分の職場を選んでいます。希望しない限り異動はなく全国どこの学校に勤めることもできます。なので訪問すると校長と職員がチームとしていい学校にしようと取り組んでいる団結力があります。20年近く同じ学校で教えている人気の先生たちがいます。地元の住民も「ここの学校は素晴らしい」と誇りにしています。子どもたちに学校が押し付けられなければ、競争力が働きいい学校にして子どもたちと住民の人気を維持しなければならない。地元のアーティストを呼んで美術の授業をしたりオーケストラを呼んだり。 そして子どもの調子が悪いときは子どもと両親と一緒に方法を探します。家庭を丸ごと支えた方が安心な場合はターラちゃんのように在宅教育支援を受けることもあります。

24万人もの子どもが登校を積極的に選択していない、転換期にできることは何でしょう。子どもたちが生き生き楽しく過ごせる学校を子どもたちと一緒につくること、子どもたちの不調を家族丸ごと支え一緒に解決まで見届けるソーシャルワークなのではないでしょうか。

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『ターラの夢見た家族生活』はフランスの支援者たちの動き、家族との関わりを具体的に知ることができる本です、是非出版実現のご支援お願い申し上げます。