共同通信 子ども守るため親子まるごと支援

共同通信 子ども守るため親子まるごと支援

2024年9月6日配信

子どもを保護するフランスの国家資格「専門的エデュケーター」を題材にした漫画の邦訳版の出版を機に、親子を「丸ごと」支える現地の在宅教育支援制度が注目を集めている。虐待防止などが目的で、日本と異なる家族との接し方を学ぼうと、児童福祉の専門家が相次ぎ視察。欧州には同様の資格制度を有する国が他にもある。漫画の原作者は「子の将来のため(課題と)闘う励みになれば」と願う。  

漫画は2月に出版された「ターラの夢見た家族生活」。精神疾患を抱え頼るのが難しい母と暮らす8歳の少女ターラが主人公で、エデュケーターが家族と信頼を築いていく物語だ。  

「ターラは安心感を求めているんです」とエデュケーターが母親に助言する場面や、「私をこんなに笑わせてくれる」「私のヒーロー!」とターラが信頼を寄せていく様子が描かれている。  

フランス政府によると、エデュケーターはソーシャルワーカーの一種で、支援対象は困難な状況にある子どもや家庭、障害を抱える人など。養成課程で3年間、理論と実践で計3500時間以上学ぶ必要があり、約6万5千人が資格を持つ。民間団体や自治体、児童福祉施設に所属する。  

現地在住の児童福祉の研究者で、邦訳した安発明子さん(43)によると、未成年の約1%が利用、ベルギーやスイスなどにも同様の資格がある。  

フランスでは子どもが対象の場合、不登校や勉強の遅れで「危険ではないが心配」と学校などに判断されたことをきっかけに支援が始まる。家庭環境の悪化による虐待は「福祉の失敗」と見られ、早期介入による「予防」に重きを置くという。  

月に5時間、多い時は週に何日も家に入る。飲食店でテーブルを囲み不安を打ち明ける機会をつくったり、親子とキャンプや旅行に出かけて互いの葛藤をゆっくり話し合ったりする「教育的外食や外出」が特徴の一つ。  安発さんらが昨年、漫画の出版を目指しクラウドファンディングを進めると注目が集まり、専門家ら約40人が現地の児童相談所などを視察した。  2度訪れた静岡県のスクールカウンセラー石川令子さんによると、日本では学校に配置されたカウンセラーなどが面接を中心に支援する。「保護者の権限が強く家庭には入り込みづらい」とし、積極的に家族と打ち解けるエデュケーターに驚いたと話す。  

漫画はフランスでエデュケーターとして働いていたパボさんが制作、地元の専門誌に連載していた。「幸せな子が増えれば幸せな大人が増える。社会の未来への投資だ」とパボさん。安発さんも「親を支える仕組みを知り議論のきっかけにしてほしい」と期待を込めた。